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離れるな


青木が見ている夢、それを見た。
全体的に霞みがかった世界で、結婚式に参加している夢。

教会から二人の男女がでてくる。
俺とドレスを着た女だ。
青木、ドレスを着るんだ。
そう思って女を見るが、モヤがかかっていて顔がよくわからない。
どうやら、新婦は青木ではないようだ。

ライスシャワーが舞う中、青木は離れたところで拍手をしていた。
スーツがよく似合っている。

夢だと分かっているので、至近距離まで行くが、青木は俺に気づかない。
それどころか、花嫁の腰に手を回し祝福の中を歩く、ニセモノの俺を見ている。
それはもう、泣きそうな顔で。

やめてほしい。そう思って青木を抱きしめる。でも、実体をもたない俺は、青木に気づいてもらえない。

なぜ、こうなるんだろうな。

薄々感じている。というか、根底がこれ。
青木の中の俺はこんな奴。
勘弁して欲しい。いつも伝えているつもりなのに、何年経っても、こう。

まず、俺は青木以外と結婚しない。
青木の中ですら、相手の女に霞かかっているのは、具体的な対象がいないからだろ。
女と付き合った事は無いし、付き合う気もない。なのに、何故。青木は俺と見知らぬ女をくっつけて、勝手に切なくなっているんだ。
そんなに俺は信用がないのか。
…青木に、こんな風に思われている俺の方が辛い。

アレと代わりたいな。

そう、願う。
青木の中の俺。よくわからないタキシードを着て、ハリボテみたいな女の腰を抱く、アレ。

そして、流石、夢。
上手いこと、代わることができた。
ようやく、青木の視界に入ることができる。

おめでとう。なんて言って切なそうに笑っている。
そんな顔も綺麗で。
むちゃくちゃにしてやりたくなる。

隣にいるドレスを突き飛ばし、青木まで駆ける。
無駄に距離がある。
名前もないような参列者が、驚いて道を開ける。
勢いのまま、青木に抱きつく。

「青木、結婚しよう!」

キスをしようと、一度体を離すと。
顔を真っ赤にした恋人がいた。

「え…夢…?」

赤い唇で、青木はそう呟く。
そう、夢だよ。夢だけど。
現実でも、言ってるよな。何度も。何度も。

俺、お前以外。無いから。

願いを込めてキスをする。
どよめきが起きる。
夢の中だというのに、こんなところはリアル。

青空の下、白いチャペルと、緑のガーデン。
こういうところで式を挙げるのが、青木の理想なのだろうか…。
起きたら、この式場を探そう。
そう思いながら、俺は口づけを受ける青木のスーツを脱がせようとした。
夢の中なら、なんでもありだろう。
このまま、泥人形のような観客の前で、裸に剥いて、抱き潰してやる。

「それは、だめ!」

さっきまで、顔を真っ赤にしていた癖に、止められた。

そして、霞が晴れていく…。


◇


「…変な夢、見た…」

青木が呟く。
ベッドの中、足を絡ませ合いながら、二人きり。

「結婚式の夢だろ」

「え、すごい。よく分かったな」

「俺も、同じのを見ていた…というか、多分。お前の夢に入った」

「はい?」

この世に神さまは、本当は居て。
俺の願いを叶えてくれたのかもしれない。

「俺、お前以外とは結婚しないから。あ、式場探そう」

二人で見ようとスマホを取り出す。
あそこ、どこだったのだろうか。
国内じゃないかもしれない。…それはそれで、探し当てる楽しみが広がるな。

「…ねぇ、もしかして。本当にずっと一緒にいてくれる…?」

スマホのライトで照らされた顔。
青白い光の中でも、頬が赤く染まっているのがわかる。

「当たり前だろ。お前が離れようとしても、俺は絶対に離れないから」

照れたらしく、両手でかわいい顔を隠す。その手にはエンゲージリング。

指輪を交換して、抱き合った夜に。
こんな夢を見られる俺の気持ちを考えろ。
青木の馬鹿。

顔を覆う白い手を握る。
ぐぐっと。手を離れさせ、顔を覗く。

「俺の方が、不安なんだけど。…想太が俺の事を捨てるんじゃないかって」

そう言うと、慌てて、ないない!と言う可愛い人。

「じゃあ、信じさせて」

すると。抵抗なく、抱けた。
いつもなら嫌がる体位、いつもなら言わない言葉。
限界まで開脚させて、いやらしくおねだりをさせて、思う存分にピストンした。
白い尻を自分で開かせて、後ろからもガンガン突いた。
気持ちがいい、彼の体内。
そこを精液だらけにしては、掻き出し。
そしてまた、注ぎ込んだ。

愛してる。そう懇願したら、俺の方がと言われたので、俺の方が愛してる。と被せてやった。

そしたら、俺が俺が…の、くだらない喧嘩が始まった。
この、くだらなさ。一生大事にしたい。
心臓が止まる日がきても、お前の事は離さない。
だから、お願い。お前も離さないで。



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霞みがかった中で、目を凝らす。
夏かな?夢の中なのに、蒸し暑い。
喧騒から離れて、夜の道を井田を連れて歩く俺がいる。
ああ、これは、あれだ。あの日の花火大会だ。

夢…だというのは分かる。このふわふわした感じ。夢独特のこの感じ。
でも何かがいつもと違う。なんだろうと思っていると、誰かの声が聞こえる。

『青木、かわいい…』

これは井田の声。
ここは、まさか。…井田の夢の中…?

『青木の浴衣姿、やっぱり可愛い』

世界に響く、井田の心の声。
でも肝心の、浴衣の俺には届かないらしい。

そういえば、あの日。
浴衣じゃないんだ?と聞かれたな。
持ってないし。って答えたけど。
着て欲しかったのか…。
そっか。悪いことしたな…。
そう思いながら、二人の後をついていく。

ひゅ〜と空気を割く音。
あの日の花火がまた始まる。

とっておきの場所。
いつか彼女を連れて、花火を見ようと思っていたこの場所。
まさか、こんなイケメンを連れてくることになるとは…。本当、恋って不思議。

そして、花火が始まり。キスをされる。
俺のファーストキス。一生忘れないやつ。
一度離れて、角度を変えて2回目。
至近距離の井田の顔。ドキドキが酷くて、このままじゃ死ぬと思って、3回目は止めた。
…おっと、夢の中の俺は止めない感じ。
そっか、井田はもっと…キスをしたがってたな…。

…しかし。
いくらなんでも、キスが長い…。
舌入れあってるな…あれ。
恥ずかしくて、見ていられない…そう思っていたら、浴衣の合わせに手を入れる井田の姿。

胸と、腿。
俺の浴衣をはだけさせて、それでもキスを続ける井田。
いやいや、ここ。外。
井田さん、何してるんですか!!

「下着、すごいエロい…」

久しぶりに喋ったと思ったら、何言ってんだ井田!
うわ。浴衣の俺の方がおかしい。なんだその下着。

「井田に…可愛がってほしくて…はいてきちゃった♡」

はいてきちゃった♡じゃねーよ。
白いレースの下着。ぜったい男物じゃない。だって透けてる。しかも面積が狭い!
勃起しかけている俺の息子がほぼ丸わかり。
やめて、やめてくれ。そんなはしたない格好を井田に見せないで!井田に引かれたら、俺、死ぬ…。

「…青木、大好き。もっとお前のエロいところ見せて…」

ああ、これ。井田の夢か…。
忘れてた…。井田…こういうのがいいの…?
薄々感じていたけど、かなりムッツリじゃない?お前。

まるで、世界から忘れられたような祠の前。
簡易的な柵に手をついて。
後ろから覆われるように、井田に抱きしめられる。

二人して夢中でキスをしている。
俺の肩まで下げられた浴衣は、服の意味を成していない。
みっともなく、胸を出して、捲し上げられて外気に晒された尻を揺らしている。

「…井田ぁ…ほしいよぉ…」

何をだ!と、自分を叩く。
やめてくれ!やめてくれ!!
そう思って井田から剥がそうとしても、実体の無い俺の手はスカスカと空ぶるのみ。

「…想太はエロいな…」

なんで、いきなり名前呼び!?
お前の方がエロいだろう。なんだこれ。本当に井田の夢なのか?こいつ、酷過ぎるだろ。

「…こーすけの、これ、ほしい…」

尻の割れ目に当たる井田のアレ。レースの下着を擦り付けて誘う、俺。
うわああああ。なんで、お前も名前呼び!?

「これ…じゃわからないよ。ちゃんと教えて?俺の何が欲しいの?」

井田のバカ!ばか!馬鹿!
当たらないと分かっていても、その頭を殴る。

『青木、うるさい』

あれ?目が合った。
そう思っていたら、ぐいっと腕を引っ張られる。
なんか、とっても変な感触がして、ぎゅううっと目を閉じる。

「…ほら、想太。何が欲しいのか、ちゃんと言って」

キスされる。
その感触で目を開く。

目を開けると至近距離に井田。
生々しい唇の感触。
舌を絡ませてくるから、唾液が飲めない。
んっんっと喘ぎのような、はしたない声。

あれ…。なんで、俺。浴衣着てる…の?

「…想太」

悪戯に笑う井田の顔。
今までは傍観者だったのに、当事者になっている。
尻の割れ目に熱いものが当たる。
いや、これ。ダメだ。恥ずかしい。無理。

「…想太、挿れていい?想太、これ、欲しい?」

そう囁きながら、下着をずらしてピタリと当ててくる。
ヌルヌルと浩介の先走りが気持ち良くて、おかしくなる。
ああ、気づいたら俺も浩介って名前で呼んでる。何これ、おかしい…。

「浩介の…おっきい、おちんちん…ほしい…♡」

違う…。俺じゃない。俺じゃない。
こんなこと、俺が言うはずない…。

「…想太、大好きだよ」

…ずぶっ♡ずぶずぶっ♡

キスされながら、挿入された。
卑猥な音を立てながら。
後ろから、こんなのまるで動物みたい…。

「ああっ…んんっ♡おっきい♡浩介のおちんちん♡きもちいい…っ♡」

…俺じゃない…俺じゃない…

「浩介ぇ♡気持ちいい♡もっとズボズボしてぇ♡あん♡あっ…♡そこ、擦ると♡おかしくなる♡」

充分おかしいよ…おまえ。
勘弁して、本当に勘弁して…。
ここ、外だぞ。そこの祠には神様だっているはず。

「想太のナカ、気持ち良すぎて…我慢できない…ねぇ、だしていい?いっぱい、想太のナカをぐちゃぐちゃにしていい?」

いいわけないだろ。
おかしいだろ、この夢。
浩介は、あの日。こんなことをしたかったのだろうか。
2回目のキスで止めて良かった。
心からそう思う。…なのに。

「…ああん…っ♡こーすけ♡ナカでだして♡こーすけのおちんぽミルク…んっ♡おれのナカにいっぱいちょーだい♡♡♡」

言うことを全く聞かないこのド淫乱な男は、俺の体を使って卑猥に叫んだ。

…ドクドク
…と。

ナカに出された。
熱い。それなのに、白い。
意識が飛ぶ。それでいい。この夢は体に悪過ぎる…。早く、醒めてくれ…。


◇



じゅぷ♡じゅぷ♡じゅぷぷぷ♡

肉を貫く卑猥な音。

「あ♡あっ♡ああ゛あん♡」

頭の悪い嬌声。
ダメだ…全く醒めていない…。
泣きそうだ…。

「んっ♡んんっ♡きもちいい♡浩介の…気持ちいい♡」

幾分か理性が働くのか。この夢の俺は直接的な言葉を避けてくれている気がする。
でも、揺すられている体が気持ち良くて…本当に夢だよな?と疑いたくなる。

覆いかぶさっている男前から、少し視線を逸らして、辺りを見渡す。
…うん。夢だな。何もない空間にでかいベッドだけが一つ。こんな場所、夢の中にしかない。

「…想太…愛してるよ♡はやく、想太のおっぱいミルク飲みたい…。想太のまんこに、俺のミルクを注ぎたい…」

耳を舐めて、チュ♡チュ♡ってキスをしながら囁かれた。
井田さん…。勘弁して下さい。
そんな声で、そんな卑猥な事を、そんな顔して言わないで…。

「んんっ♡おっぱい、そんなに強く吸ったら♡おまんこでいっちゃう♡♡」

俺も負けじと馬鹿。
でも、しゃあない。乳首をしゃぶられながら、ガンガン突かれているんだから。

ああ。乳首、気持ちいい…。浩介におっぱいって言われた…。恥ずかしい。
でも、本当にそうかもしれない。浩介に触られて、舐められると、むず痒くて、すごくエッチな気分になる。
もう、気持ちいいしか浮かばない。
この夢に入って数分しか経ってない気がするけど…。もうイきそう…。

「あ…♡あああっ…んんっ♡」

ぐりぐりって浩介のおっきいおちんちんで、前立腺をコリコリされた。
気持ち良すぎて、射精した。
白い液が飛び散る。
まさかのちんこからと、乳首から。

ミルク…。いや、下は分かる。でも上の…胸から、出たのは…。

「おっぱいからミルク出して、気持ちよかった?」

興奮真っ只中の浩介が、ミルクで濡れた俺の乳首を舐めながら言う。
胸にビリビリって電流が走ったような痺れ。
繰り返される挿入、奥を突く時に、ぐりぐりって腰を回してくる。
気持ち良すぎて、喘ぐ声がとめられない。

現実の世界でも、体を重ねた事はある。
でも、こんな風に動物的じゃない…。
浩介は挿入する時はゴムをつけるし、こんなに酷く激しく突いたりはしない。
中出し…そんなのされた事ない。
でも…この夢の浩介は、本当の浩介は、俺にそうしたいんだ…。

「当たり前だろ…。中で出さないと、赤ちゃんが育たないんだから」

浩介はそう言って乳首を激しく吸う。
吸われる度にびゅーって、おっぱいがでる…。ウソ…こんなの、あり得ない…。

「想太のおっぱいを俺が口で吸って。そのミルクを飲んだ俺の精液を、想太のかわいいまんこが吸って…
そうしないと俺たちの赤ちゃんが育たないだろ?」

俺の喘ぎ声がうるさい中、浩介がとても冷静に教えてくれる。
…ごめん。何言ってるか、わかんない。
何、そのファンタジー。
むしろ、ミステリー。

「ほら、俺のミルク…ちゃんと、このエロいアナルで飲み干して…ん…っ」

打ちつけられるスピードが上がって、浩介が限界なのが分かる。

「あっ♡あ♡こーすけのおちんぽミルク♡ほしいっ♡いっぱいだして♡んんっ♡ああんっ♡♡♡」

「想太ッ…そうたッ…んんっ…」

射精する浩介の声が色っぽい。
すごい…。あったかくて、きもちいいものが、俺の体内ではじける。
うれしい…。大好き…♡

最後の痙攣が終わっても、俺の体内は浩介のペニスをしゃぶり続ける。
長い射精、大量のミルク。
体が恥ずかしいほどに喜んでいる。

「んっ♡んんっ♡」

浩介がキス、してくれる♡
どぴゅどぴゅと母乳を出すおっぱいを長い指でコリコリしてくれる。まんこにはおっきい浩介のおちんちんが気持ちいい。
射精が終わったのに、はしたなく腰を揺らして、まだちょーだいって搾り取ってる…。
恥ずかしい…。でも、気持ち良くって、幸せで…。もう、どうでもいい♡

「想太…ほら、俺たちの赤ちゃん、喜んでる」

浩介みたいにキレイに割れていない俺の腹。そこに手を当てて微笑む、恋人。

ああ、本当だ。胎内からうれしそうな気持ちが伝わる…。
浩介の子供、ちゃんと会えるんだ…。
嬉しい…。

泣きそうになっていると、キスをしてくれた。

「これが、俺たちの一番の幸せだから…諦めないで、こうなる未来を二人で作ろう」

うん。ありがとう…。そう思って意識を飛ばした。


◇


目を開けると、やっぱり至近距離に浩介。
でも、ここは見慣れた部屋。
腕枕なんかしてもらっちゃって、すごく密着してる。

「…おはよ。夢はどうだった?」

浩介に聞かれる。
ほんと、どこで手に入れたの?こんな特技。

「うん…なかなか、良かった…」

照れ臭くて視線を外す。

「もう、勝手に俺の幸福を決めるなよ。俺、お前以外と結婚しないし、お前以外を孕ませる気ないから」

「…うん」

唇をムニムニといじられ、怒られる。

「俺の子供が見たいって言うなら、想太が産むしかないから。もう、俺から離れるのを諦めろ」

「はい…」

俺が産む…。そんなことはできない。
そう、思って、諦めてきたけど。

「科学の進歩。なめんなよ」

噛み付くようなキス。
確かに。未来に不可能を背負わせるなんて勿体無い。

「…浩介、ありがと」

俺からもキス。大好き。
それだけは、絶対に変わらない。

「…想太、とりあえず。試してみないか…」

「…ん?」

熱っぽい瞳で見つめられると、頭がおかしくなりそう…。

「中で出したら、今日は、妊娠する…かも」

赤い顔を掌で覆いながら、浩介が言う。
顔が熱い。動悸がする。
全身が熱っぽい。もう。こんなの、病気だ。

うん。って頷く前に、甘いキスをくれた。
そのまま深く口付け。
窺うように撫でられる下半身。
俺も同じ気持ちだよ。と上から手を重ねて、挿入して欲しい部分に導く。

目があって、お互いに照れる。
二人の間、形に残るものは無くても。
こんな毎日をずっと続けていけたら、それでいいのかも。
優しい、この人が大切で。
離さないよ。と抱きしめた。


end



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