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誕生日、ごめんね




「想太…もう、我慢できない。想太が好き。想太が欲しい。想太とずっと一緒にいたい…」

フェラチオ。それをした。そうしたら、ガバッて覆い被さられて、すごく熱っぽい瞳で、告白された。
唇が降りてくる。キスをされる。それ位は分かる。だから…。

「ごめんなさい!!」

力いっぱい顎に掌底打ちをして、逃げた。

どうしよう。どうしよう。やり過ぎた…。
やばい、やばい。俺って馬鹿だ…。

そう後悔して、走る。追いかけてくるわけじゃ無いだろうけど、自分の馬鹿さ加減に呆れて走る。
…岡野くんの家から。


◇


二月末、現地での二次テストの為に、ビジネスホテルで部屋を取った。ダブルでもツインでも無く、シングルを二部屋。

入試が終わったらそのまま新幹線で帰る予定。なのに、井田は拗ねて明日も泊まると聞かない。だから、俺からキスをして、井田の部屋で勉強を教えて?と、ごまかした。

シングルルームの机。二人で腰掛けて、俺は演習を解いている。問題を解き終わる度に、隣からキスが降ってくる。もう、キスが気持ち良くて集中できない…。

「んんっ…いだ…もう、勉強できないから、キス…とめて…んんっ♡」

舌を絡め取られて、肉厚な唇で吸われる。ちゅぷって派手なリップ音をわざとさせて、井田がようやく、唇を離してくれた。

「ごめん…青木が可愛くって…。隣に、こんな近くにいたら、我慢できなくなった…」

そう言って名残惜しそうに、俺の唇を長い指で撫でてくる。色っぽい目で見つめられると、俺までうっとりしちゃって…。ああ、だめ。ダメだ。勉強、勉強に集中しないと。

演習問題に再度向かう。そんな俺に軽く溜息を投げかける井田。「青木の隣で勉強を教えていて、岡野はよく平気だよなぁ…。俺が青木の事、好きだから耐えられないのか…」そんな事を言って、俺の頭を撫でる。
頭もやめてほしい…気持ち良くなっちゃうから。

「じゃあ、井田。採点する間、手を握っていて」

あ、そうだ。と言うように井田に提案する。返事をくれるより早く、井田が俺の手を握ってくれる。
右手で丸付け、左手には井田。…おお、調子良い。この調子だと全問…。

「やった!全問正解!!井田ありがと!」

嬉しくなって、隣の恋人にハグ。少し驚いた後、抱きしめてくれる井田。首元に顔を埋めて、ぎゅうっとしてくれる。

「あ、ごめん。つい、いつもの癖で…」

そう、謝って。離れた。
自分からキスを止めておいて、また抱きつくとは…。ダメダメ、井田と二人っきりだと、すぐに良い雰囲気になっちゃう。明日は入試。我慢、我慢!

机に向き直そうとすると、顎を掴まれた。あ、キスかな?と思って井田の目を見つめると…え?怒ってる?

「…いつもの癖って?何?」

「しゃいてんのちょきに…おきゃのきゅ…」

頬に井田の長い指が刺さる。喋れ!と促されているんだろうけど、頬をむにむにされるから、うまく喋れない。

「…採点の時、岡野くんが手を握ってくれるから、つい癖で…」

頬を刺す指を止めてくれたので、なんとか喋れる。いつからか、採点をする時に岡野くんが手を握ってくれるようになった。そして、満点だったら、お互いにやった!とハグするようになった。
それを井田に説明すると「は?」と恫喝されて、スマホを没収された。岡野くんとのやり取りを見せろと、パスコードを入力させられる。

「…この、パンツって何?」

俺のスマホをサクサクと操り、岡野くんとのラインをチェックし、追求してくる井田。

「ああ、それは…。岡野くん家に泊まりに行った時、下着借りたんだけどさ。それを返すって話したら、洗濯してくれていた俺の下着と交換でいいって…あれ?井田。どしたの?怒ってる?」

「…いつ?なんで泊まった?なんで下着盗られてんだよ…」

「とられたわけじゃ…。塾が終わって、岡野くんと一緒に帰っていたら急に大雨が降ってきて。このままじゃ風邪ひくからって家にあげてくれてさ。その時、風呂借りて、洗濯してもらって…もう、遅いから泊まっていけよって言ってくれて。…ねぇ。井田、顔、怖いよ…」

「なに、された?」

「何って、別にもう嫌なこと言われないし、岡野くん、ちゃんと優しいよ」

舌打ちの後、壁を叩く井田。その大きな音に体がびくってなる。

「お前。狙われてんのがわからないの?ラインでもかわいいって口説かれてんじゃねーか」

「そんなの、あいさつだって。な、もう。いいから、勉強しよ?」

「だめだ。ちゃんと、俺のものって印つける」

そう言って首筋に吸い付いてくる井田。
狭い部屋。机のすぐ後ろにはベッド、そこに押し倒される。
首筋だけじゃ無い。鎖骨や喉元にもキスされる。腹からセーターの中に手を入れて、胸を触られる。すぐに場所がバレる乳首、そこを擦って摘んでくる。声が漏れてしまう。

「んっ♡だめっ♡明日、入試なのに…!誕生日まで、待ってっ♡」

バレンタイン前、公園で服の上から触られた事はあったけど、直接触られたのは初めて。あっくんに触られた時とは全然違う。ドキドキするし、乳首を摘まれる度に心臓がきゅっとする感じ。簡単に言うと、勃起しそう。勘弁してほしい…。

「青木…きれいだよ。すごく、いやらしい…」

いつの間にか鎖骨近くまで上げられた服、井田が俺の胸をしゃぶっている。舌で乳首を転がして、長い指でもう片方をコリコリと擦っている。乳首から快楽が伝わって、下半身を昂らせる。ああ、井田の股間もすごく固くなってる。

「んっ♡んんっ…♡」

乳首はレロレロとしゃぶったままに、片方の手は俺のベルトに忍び寄ってきた。カチャカチャと外される…。井田、何しようとしてる?だめ。ダメダメ…。

「青木…我慢できない…欲しい。セックスしたい…」

「っ!!だめー!」

渾身の力で、井田を投げ飛ばす。
信じらんない。井田って初めてじゃ無いの?なんでこんなに服を脱がすのがうまいの!?

「誕生日にって約束した!明日は入試だし、もう俺は寝る!おやすみなさい!!」

ようやく陽が沈んだくらいの時間なのに、寝ると言って、井田の部屋から逃げた。
そのあと、何回かラインが来て、部屋の電話もかかってきたけど、明日がんばろ!って言って切った。

二日間のテストが終わり、関東に戻る夜。もう一泊したいって、井田はまたごねた。だめって叱って新幹線にひっぱって乗せたら、周りに人がいるにも関わらず、ずっと手を握られた。互いの家に帰る前「誕生日、絶対だからな…」と、念を押された。

入試はこれで全て終わり。あとは結果を待つだけ。…でも俺には合格発表前に一大イベントがある。
もしかしたら、大学入試なんかよりも大事なイベントが…。


◇


「長い前置きだったな…」

「ご清聴、ありがとうございます」


三月、俺の部屋。窓からの風でレースカーテンが揺れる。暖かくなった…そう思う。

俺の家にあっくんを連行して、人生相談。
相槌も打たずに、ケーキを食べながらではあるが、全部聴いてくれた。さて、先生。俺はどうしたらいいでしょう?

「つまりさー。井田が心底気に入らなくて、気をつけろと注意していた岡野に、青木はフェラチオしたって事だろ?普通に考えて、愚か者過ぎ」

愚か者…。初めて言われた。馬鹿とか、アホとかのレベルじゃないと…!

「いや、それは。確かにしたんですけども。そもそもは井田とのXデーの為に、練習をさせて欲しいと、岡野くんに懇願しまして…」

受験が終わり、塾通いもなくなった。
合否に関わらず、岡野くんにはお礼をしっかりしなくては…と思っていたら、逆に岡野くんから労ってもらえた。
ジャケット着てこいよと言われて向かった先は、随分と洒落たレストランで。受験を頑張ったお祝いにとコース料理を食べさせてくれた。
こんなところに来るのは初めてで、ありがとうと言いながら頬張っていたら、好きな子を連れてくるようにしてる店。気に入ったならまた、来ようと言ってくれた。

「あ、ストップ。それ、もうだめだろ。岡野、好きな子って言ってんじゃん」

回想中の俺をあっくんが止める。…なるほど。確かに!気づかなかった。岡野くんのデートで使う店なんだなぁ。と単純に思っていた。いつか、井田を連れてきたいな…なんて思ってた…。岡野くんがそう言っていた間、俺はうまいうまいと、前菜をむさぼっていた。ああ…。俺ってこんなに無神経だっけ?

「青木、そういうの結構聡い方なのにな…。自分の事だとわかんないもんだよなぁ…」

珍しくフォローしてくれるあっくん。そうなんだよ、俺、こういう機微ってわかる方なんだよ。多分、岡野くんとはトラブルがあったから、全く考えなかったんだ。だって、あの人、男同士を馬鹿にしたし。

そのあと、なんだか恋バナになった。岡野くんは彼女と別れて、今は付き合っている人がいないとか。でも、好きな人はいるとか。そんな話をした気がする。井田とのことをやたら気にしてくれて、受かったらどうするのか?とか、もしダメだったら、今後の付き合いはどうするのか?とか。かなり、相談に乗ってもらって…。

「もう狙われてるじゃん。でも、それで、何故にフェラチオになる?」

あっくんが、話を端折ろうとする。俺の分のコーヒーを飲んでいるのは、早く飲み物を持ってこいと言うメッセージですかね?

「井田の誕生日がもうすぐで、その時に、エッチする話を、相談しまして…」

「ああ、それ言っちゃったんだ。愚かだねぇ」

せめて、馬鹿と罵ってほしい。いや、まぁ。確かに愚かなんだけれども。

「井田に満足してもらえるようにフェラチオを練習しているんだけど、上達しているか分からないから、実施でアドバイスをして欲しいと言いました。岡野くんに…」

「それで?相手はなんだって?」

「しばらく黙った後に、いいよ。うちにおいでと言ってくれました…」

「お前が悪いなぁ…それは。完全悪だな」

ぐっ…。確かに。今思うと、フェラの練習させてくれとは…よく、引き受けたよな…岡野くん…。

「岡野くんの部屋に行って、早速脱いでもらって、良いところを教えてもらいながら咥えました。上手だよ、才能あるなんて褒められて、調子こきました」

あっくんは、最早。溜息しか吐いてくれない。
いや、でもね。岡野くんって褒め上手なんだよ。言われた通りにしゃぶっていたら、結構早くに達してくれて、あ。俺、才能あるかも…ってなったんだよ。
今までしてくれた事のある、どの彼女よりも上手だし、こんなに早くイったの初めてって褒めてくれるから、テンションあがっちゃったんだよ。やっぱり、男の良いところは女の子よりも、男の方が分かるんだな♪なんて、調子こきまくったんだよ。

「それで、襲われたと。まぁ、そりゃあ好きな相手がノリノリでフェラしてきたら、そうなりますなぁ」

ぐ…。いや。でも俺、好かれてるとは全く思って無かったから…。そりゃあ今は嫌われてるとは思ってなかったけど…。うーん。やっぱりちゃんと岡野くんとは話をしなきゃだなぁ。

「青木、お前さー。井田が青木とエッチする為に練習するって言って、他のやつとしてたらどう思う?」

ぐだぐだ悩んでいたら、相多先生からのお言葉が降ってくる。
え?井田が?他の人とエッチの練習…?…殺す。井田を殺して、俺も死ぬ…。

「…あれ?俺、もしかして、殺される?」

「だろーね。短い人生だったな。結構良い奴だったぜ。お前」

あわわわ。これから楽しいキャンパスライフ。そう思ってたのに!この年で死ぬのか?俺は…。

「まあ、じゃあ冥土に行く前に。そんなに上手いんなら、オレにもやって!」

フェラチオ!と元気いっぱいに要求される。キラキラの眼で。
…まぁ、俺も数をもっとこなしたかったし、あっくんがこんなに生き生きするのは珍しいし…って事で、ベッドに仰向けになってもらった。

制服のスラックスを下ろして、派手な下着に手をかけると、友人のペニスが勃起していた。ふにゃふにゃのところからやってみたかったが、フル勃起してくれているのは、やりやすいからありがたい。下着を下ろして、舌で先端を舐めだす。

「ん…青木、すげえ。口やベロがすげえ、柔らかい…」

人によってチンコも違うもんだ。そんな事を思いながら集中する。
そしたらあっくんに、確かに上手い。だけど、俺。青木のこっちに挿れたい。と尻を撫でられた。

「男同士ってここ使うんだろ?こっちの練習はいいの?」

「井田は男が好きなわけじゃないし。アナルセックスして萎えられると、死ねる。口なら俺も女の子もそんなに変わらないだろうから、オーラルセックスで頑張る!」

聞かれたから答えた。チンコの近くで喋られると、変な感じしちゃうんだな。よし、また一つ勉強になった。
あっくん、すぐにイかせてやるから、待ってろ!俺のフェラテクの前に震えて射精しろ!

「フェラも良いけど、ここに挿れてみたい!青木の尻にチンコ突っ込みたい!」

先走りをぴゅーぴゅーだして、訴えるあっくん。気持ちよさそうにしてくれるから、すごく嬉しい。
よし、じゃあ。あっくんがフェラでイケなかったら、アナルセックスね!
と賭けが始まる。

「青木っ。おまえっ、それ。ずるいっ…。もう、すげえ、気持ちいい」

やっぱり俺は才能がある。
あっくんなど、秒殺だった。
岡野くんの時は吐き出させられたけど、あっくんのは飲んでみた。噂通りに変な味。

井田のはどんなんだろ…?そんな事を思いながら、誕生日までを指折り数えて、待ち侘びた。


◇


とうとう。この日がやってきた。
日付が変わった頃、すぐに今日のプランを井田に送りつけた。これでいかがですかと。

すぐに電話がかかってきた。ありがとう。って。
体力勝負の1日になるかも。そう思ってちゃんと寝ろよ!と伝えた。通話を切る前にはカッコつけて「生まれてきてくれてありがとう」って言ってみた。本当は顔を見てカッコつけたかったけど、恥ずかしくて上手く言えそうも無いから、切る間際に叫ぶように伝えた。

朝、電車で顔を合わせた時は、お互いに照れくさかった。
「誕生日おめでとう。ようやく俺と同じステージにきたな!」
顔を見ると、これからの事が浮かんできて恥ずかしい。だから、照れ隠しの為にふざけてみた。年下扱いをして…と拗ねられるかと思っていたのに、ぼーっと俺を見るだけの井田。風邪でもひいてるのか?と思うほど、ぼーっとしている。
心配になって大丈夫?って聞いたら「これから青木とセックスするんだなぁ…って」と言いやがった。
こっちまでぼーっとしそう。
いや、まだだから。まずは学校だから。

後わずかで卒業。自由登校期間だから、別に行かなくても良い。でも、アリバイづくりの為に行く。
午前授業という名の自習。それが終わったら駅ビルで私服に着替えて、都内に向かう。
買い物をして、夜になったら高層ビルの店で食事。それから、それから。ホテル密集地帯に向かう。同性同士と検索して見つけたアジアンリゾートのホテル。ツインとかダブルとかじゃなく、ラブホテルは部屋だけを借りるらしい。
ベッドのタイプなんてわざわざ選ばないのだ。だって、やる事は一つだから。

井田には目的地と、予約した場所を伝えてある。俺なりの所信表明。
愛しているよ!井田!変なテンションで叫び出しそうな感じ。
年上だし、リードしなくては…!俺のフェラテク、思う存分、味合わせてやる!!

…だから、岡野くんと、あっくんのことは、許してほしい!!むしろ、許せ!



………。


…沈黙が痛い。
土下座。頭を擦り付けての。
長い沈黙に顔を上げる勇気が出ない。

母さんは誠実な子が良いよ。って言っていた。俺もそれが良いと思う。だから、正直に打ち明けて、ごめんなさいをした。
変なテンションのまま、許せ!なんて居丈高な事はしないようにした。

初めて入ったラブホテル。バリ風らしいのだが、よくわからないヒーリングミュージックが、沈黙をおかしなものにさせる。天蓋のあるベッドに腰掛けた井田。その足元でひれ伏す俺。…怖い。何もしゃべってくれない…。

「フェラの練習して…他の人で練習してごめんなさい。あっくんに言われて気がついた…。もし、井田が他の人とセックスの練習してたら、俺、辛い」

想像しただけで涙が溢れる。逃げていても仕方ない…と思い、顔を上げる。

「ひっ!井田っ!ごめんなさいっ!!」

真顔で、俺を睨むように見つめて、井田は泣いていた。

「ごめんなさい!なんでもするから、お願い。別れないで!別れるのだけはやだ…」

「馬鹿!絶対に、別れない!」

掠れた声で怒られた。怖い…でも、よかった。別れないって言ってくれて、ホッとした。

「…脱いで。青木が自分で。裸になって全部見せて…」

怖い顔で涙を拭いながら、命令された。ああ、そういえば裸をみせる約束があったなぁ。…裸土下座…。マニアックだな…。

言われた通りに脱ごうとシャツに手をかける。制服のシャツよりも小さいボタンに手間取る。いや、手間取ってるというより、手が震えているから、うまく外せない。フェラチオ…上手にやらなくては…!なるほど、上手だな。と褒めてもらえるように、頑張らなきゃ…。

「遅い!!」

そう言って井田が俺のシャツに手をかけた。そして、開封した。ブチブチブチって、ボタンが弾けとぶ。ボタン!!俺、帰りはどうすればいいの!?早く、拾わなきゃ!

「やっぱり素肌にシャツ着てた…」

やばい。井田がやばい。怒りすぎて興奮しているのだろうか?目が据わってる。息も荒い。
ボタン、拾ってる場合じゃなさそうだ。

「乳首、ずっと立ってる。気になって何食べてるのかもわかんなかった。青木。お前、これ。誘ってるんだよな?」

誘ってません。違います。気にしてませんでした。そう伝えたくて首を振るのに、井田は俺を抱き締めるから、きっと伝わってない。
乳首立てて誘うなんて、とんだ淫乱野郎じゃないか。そんなこと、俺、しない。
…と、いうか。何食べてるか、わかんなかったの?高層ビルに入っているイタリアン。奮発したのに!頑張って予約したのに!
夜景でロマンティックに酔いしれろ!と思っていたのに、乳首見てたの?お願い、景色見て!

「日付変わって、すぐにメッセージくれて。すごくうれしかった。ホテルの予約してあるって言われて、すごく感動した…」

強く抱きしめられる。井田の熱っぽい吐息が耳にかかる。ゾクゾクっとして、体が熱る。

「…なのに。今度はフェラだと…。お前、殺されたいのか…?」

耳を齧られる。ああ、やっぱり死をもって償う系ですかね…。うう、待って。俺は井田とずっと一緒に長生きしたいよぉ…。

「青木、ベッドに横になって」

この流れだと、従う他ない。黙っておとなしく横になる。すると、足元に色々と投げられた。

「え?これ。何?」
「…エネマグラ。これからローション使って青木の尻の中に入れるから。自分で脚開いて」

え、えね…?何このへんなやつ。ローションは俺だってわかるけど…。というか、尻って、井田もアナルセックスをお望みなの?これは想定外…。
そう、戸惑っていると、井田が服を脱ぎ始める。腹筋が割れていてかっこいい…。肩幅が広くて、きゅんきゅんする。そして…ボクサーパンツ越しに井田のおっきいのが主張している。…見たい。生で井田のおっきいのを見たい。そして…フェラしたい…。

「井田…俺、今日の為に。井田の誕生日の為に練習してきたんだよ。だから…お願い。俺にさせて…」

ベッド上に乗り、俺に跨った井田。目の前に井田のがあったから、思わずお願いした。
了承を得る前に、下着に手をかけて、下げた。

「井田の…おっきい…いちばん…すごい」

俺の目はきっとハートマーク。
井田のおちんちん…すごい。おっきい…。それに…下着から出した時に、糸を引いた…。

「おい。誰と比べてんだよ」

そう言われて頬を両手で掴まれる。舐めようとしたところだったのに…。

「井田に…気持ちよくなってもらいたくて…エッチの練習してた…ごめん。
でも、俺、うまくなったから!井田に褒めてもらえるように頑張ったから!フェラ…」

全部言い終わる前に、キスされた。
そして押し倒される。後ろがベッドでよかった。こんなに勢いよく倒されたら、普通は痛い。

「なんで、そんなもの他人で練習するんだよ馬鹿!まずは俺に言え!」

「…だって…井田にかっこいいところ見せたかった…」

「…そんなのいいから。俺に任せて、脚開いてくれればよかったのに…」

そう言って、井田はまたキスをくれた。
ローションのキャップがきゅぽっと間抜けな音を立てて開かれる…。

「…井田…それはやめないか…。アナルセックスはよくないと思う…」

「…は?」

井田があけたローションの蓋を、閉じて、俺は真剣に解説する。

「ご存じのとおり…俺は男だ!」

「……」

自分を親指で指さす。とりあえず聞いてくれる様子。
すごく面倒くさそうな顔をしているけれど。

「俺も勉強した。たくさん調べた。結論から言うと。辿り着いたのがオーラルセックスだ!」

「……」

井田がまたローションのキャップを開ける。

「いやいや最後まで聞け、井田。俺は男だから、女の子のように井田を気持ちよくしてあげられない。
それに、男の裸を見ても、井田は元々男好きじゃないから、勃たないだろう。だから、服を脱がずともできるオーラルセックスが一番なんだ!」

もう一度、井田の開けたローションのキャップを閉める。
すごく大きな舌打ちをされる。

「青木…俺のコレ、見えるよな。…コレはどうしてくれるんだ?」

暗に井田の股間を見ろと指示される。ああ、そうですね。すごく…嬉しいです。

「青木、自分で脱がしたんだから分かっただろ?お前の乳首見ただけで、俺、射精したんだけど?」

「ああ、うん。ありがと…」

思わず。えへへ。って笑ってしまった。
だって、すごくうれしい…。井田が俺の裸見て、こんな風になってくれるなんて…単純に嬉しい。

きゅぽっ。

いやいや、なんでローションを開けるかな!しかも、すぐに中身を手に取るかな!?

「何だっけ?勃起しないだっけ?青木、コレ。どうするつもりだ?」

勃たない…の反対語みたいな形状になっている。井田のチンコ…。
おっきくて、ぴくぴくしてて…濡れてて…すごくエッチで…。

「フェラ…させてほしい…です」

「絶対に今日は嫌だ。青木のアナルに挿れる。絶対に挿れる。自分で下着、脱いで」

首を振る。いやいやと。だって…。だって…。それはいや…。

「青木、脱いで…」

優しい声が、少し強くなる。でも、でも。それはできない…。だって…。

「青木、脱げ」

とうとう命令になる。うう…。逆らえない…。
下着に手をかける…下げなきゃ…思うのに、なかなか手が動かない…。

「なんだよその焦らし方…お前、そんなのどこで覚えてきたんだよ…!」

そう言って、井田が俺の手を下げさせた。恥ずかしい。井田に、全部見られた…。

「くそっ……」

そう、舌打ちして。井田が自分のチンコの先端を掴む。
もしかして、イキそうになって…くれたの…?

「青木…おまえさぁ…俺が青木のこと好きって、ちゃんとわかってるか?」

俺のボクサーパンツがものすごく遠くへ投げられる。
あああ、何で投げるの!?そう思っていたら、足首を掴まれて、おもいっきり開かれた。
こんな格好。多分、赤ちゃんの頃以来ってぐらいに。

「好きな人の裸に反応しない奴、いないだろ…!」

そう言って、井田は自分のと俺のにローションを、どろどろーってかけた。
大量に、それはもう大量に。

「本当は時間かけなきゃいけないみたいだけど…。無理だから。悪いけど、あきらめて…」

え?何をあきらめるの?そう、聞きたいのに、聞けない。
冷たいローションがぬるぬるってするのと。井田が、俺の尻の穴に指を入れてきたから。

「あああっ♡あっ♡やだ!さわんないでっ!コリコリしないで!」

「ああ、ここかよ。青木の前立腺…もう膨らんで、わかりやすくなってる…」

恥ずかしい。そんな事、言わないでほしい…。
顔を背けていたら、どんどんローションがかけられていく。
すごい量があるのに、全部使い切るように…。

「こんなにエロい体してたのかよ…。これで、よくも…まぁ…」

井田が怒ってる…。なのに、指をいれられて、申し訳ないほど気持ちよくなってしまう…。
馬鹿みたいに喘ぐ声が止まんない…。

「ああっ♡いだっ♡んんっ…ああっ♡だめっ、それは…むりっ!!」

指を抜かれて、落ち込んでしまったら、ものすごく熱い物をぴたぴたとあてられた。
むりむり…あんなおっきいの。こんなとこ、はいらない!

「青木、力抜け…」

そんなこと言われても無理!そう思っていたら、乳首を摘ままれた。
そして、コリコリって、潰される…。

「ひゃあ♡むね!だめっ…!」

乳首からの快楽、ピリピリと潰された箇所から電流が走るよう。
きもち良くって、そっちに集中にしていたら、ヌプププって、井田が挿ってきた…。

「ああ゛あ゛ああっ…ん♡♡」

目の奥がチカチカする。すごい質量の物が、ゆっくりゆっくり、俺の体内にはいってくる…。
こんなところにこんな巨大なモノが侵入してくるなんて、想定外!と、体が訴える。

「井田ッ…!いたいっ!痛いッ!!無理!!」

ゆっくりと、ゆっくりと侵入してきていたのに、そう叫んだら、一気に奥まで突き刺された。
痛い!!また叫ぶ。

「俺の方が痛い!!」

叫んだら、叫び返されるという…!え、痛いなら。井田さん、やめようよ…。
そう言おうとしたのに…。

「オーラルセックス、他の奴にしたんだろ…。セックス。俺よりも先に…」

井田が、また泣いている…。すぐに許してくれるとは思ってなかったけど…。

「俺の方が痛い。俺の心の方が痛い!青木ッ、お前は我慢しろ!!」

「はいっ!」

元気よく返事したら、ピストンされた。
ひゃあ♡って変な声が出る。

じゅぷじゅぷッ♡♡っていやらしい水音をたてて挿入部が大変なことになっている。
俺からは見えないけど、井田からは見えるみたいで…。
舌打ちしながら「なんでこんなにエロいんだよ!」って怒ってる。
怒られているから、謝る。ごめんなさい!って。でも、俺の誠意に反して、体と声は正直すぎて…。

「あああんっ♡ああっ♡ごめんっ♡なさいっ♡♡んんっ」

と、ただ、気持ちよく喘ぐだけ。痛い、痛いって叫んでたはずなのに。
あっという間に、気持ちよくなっちゃった。
ああ…だから嫌だったんだ。

「あああんっ♡いだっ♡ごめんなさいっ♡きもちよくなっちゃって、ごめんなさいっ♡」

「ほんと、これじゃお仕置きになんない!クソ、なんでこんなに可愛いんだよ!お前ッ」

そう怒られながら、ずっとずっとおっきいチンコで奥までガンガン突かれる。
その度に井田の亀頭が、カリが。俺のナカの気持ちいいところ…前立腺ってトコを引掻く。
きもち良くて、きもち良くて、頭の中が真っ白で。井田の挿入に合わせて、はしたなく腰を振る。
もっと、して!って、態度が全部を表しちゃうので、俺の謝罪なんて、ものすごく軽いものになる。

「いだ…いだ…ごめんなさいっ♡もう、だめっ。俺、もう出るッ!!」

「青木ッ…!俺も……!」

色っぽい声で名前を呼ばれて、ああ、もうダメだ…と思っていたら。キスされた。
すっごく、きもちいいキス。
イっちゃった…。頭が真っ白になっていく…。ぴゅっぴゅーって、俺のが井田のお腹にかかる…。
ドクドクって…井田のが俺のナカにでる…。ああ、すごく気持ちいい…。
こんな、気持ちいいことって…あるんだなぁ…。



◇



やってしまった…。

意識を飛ばして、ぐったりしている恋人。
ダメだ。本当に、青木の事だけは、いつも通りにいかない。

誕生日…。こんなに待ち遠しくて、楽しみだった日は今までに無い。
恋人が、くれるといった。…全てを。
愛らしい瞳で、甘い声で。俺にくれると言ってくれた。

青木はかわいい…。
目の前に居ても、居なくても青木の事を思うと、ぼーっとする。
いつも青木の事を考えているから、ずっとぼーっとしている。
青木の事をずっと思って、考えている。
『あの体を、あの甘そうな体を、どうにかしたい』
そういうどうしようもない欲望が湧いてきて、苦しくなる。
あまりに苦しくなると、辛くて仕方がない。無理矢理、見たくなってしまう。
…それはダメだと。約束の日まで、待とうと。そう思って、気分を紛らわすために、勉強をした。
紛らわさないと、襲ってしまう。必然と紛らわせる時間が多くなる。勉強時間が長くなる。

風邪ひこうが、骨折しようが。もう、落ちることはない…。
そこまで仕上げてしまった。受験…早く終わらせたい。そう思って耐えた二月。
受験後は暇で仕方がなかった。約束の日、二次の終了日にすればよかった…。
もう試験は終わっているのに、お預けを食らっている気分だった。
なんで、合格発表までこんなに時間がかかるんだ!そう、不条理に怒っていた。
早く二人暮らしの話を進めたい。青木と、早く二人で暮らして…毎日、あの体を、俺のものにしたい…。

試験が終わったというのに、青木は二人きりになってくれなかった。
誕生日…楽しみにしてて…って顔を赤くして。俯いて。そう、言うばかり。
そんな仕草が可愛くて、欲望を抑えて「うん…」と返事をしていた。
単純に、可愛くて。ぼーっとしてしまっていたのもある。
なんの準備をしてくれているのだろう…そう思いながら、独りで慰めていたのに…。
俺がそんな事をしている間に、あいつは…練習していただと?

だめだ…許せない。こんなかわいい唇で、赤い舌で。俺以外の…青木を狙っている奴のを咥えて舐めた…。
ああ、思い出して、頭が沸騰する。…許せるはずがない。
大好きで仕方がなくて、別の家に帰るのも、嫌で仕方がないのに。早く一緒になりたいって、気が狂うほどに思っているのに。

濡れたシーツの上で、眠る恋人。
ぐったりとしている…。痛いと言っていた…。なのに、無理矢理挿入した。
受験後、暇で仕方がないから。恋人の体を開く道具を買いに来た。…この街に。
ネットで調べて、わざわざ買いにきたアダルトグッズ。…結局使ったのはローションだけ…。
青木から送られてきたメッセージ。そこにあったこのホテルの名前。
俺も調べていて、見に来ていた。
ここに連れ込もう。そう思っていたから、青木のプランには歓喜した。
俺たち、気が合うな。って。

音楽…流れていることにようやく気付く。
さっきまでは全く気にならなかった、部屋のBGM。ヒーリングミュージックってやつなのだろう。
なんだか笑える。音楽も聞こえないほど、夢中になっていたなんて…。

見つめているとまた襲いそうで、我慢していた恋人の体。
ちゃんと大切に抱え上げた。
ホテルのウリである広いジャグジー。そこに連れて行く。
抱えると、目の前に、あの乳首。
ああ、なんでこんなにエロいんだ。
すぐにでもしゃぶりたくなる気持ちを抑えて、浴室へ向かう。

普通は、セックスの前に…最初にシャワーだったのかもしれない。
全く我慢ができなかったところが、なんだか俺たちらしい…。そう思いながら連れ込む。


「…んっ……ん、いだ?」


甘い声が、俺の名前を呼ぶ。
ジャグジー。湯をはって、青木の体を洗っていたら、やっぱり我慢できなくなって…挿入した。
風呂の中で、意識を失っているのをいいことに、エロい穴に、ずぶずぶと挿入してしまっていた。

「青木っ…好きだ…」

非難されるのを恐れて、口を塞いだ。んっ♡って甘い声が漏れる。
本当に、この子はかわいい。

「ああっ♡いだのおちんちん♡きもちいい♡ごめんなさい…おればっかり、きもちよくて…」

悪いのは俺なのに…。なぜか青木が謝る…。目を潤ませて、すごくエロい…。

「ほんとうは…おれ。…いだの…おちんちん…いれたら、どうなっちゃうんだろうって…いじっちゃってた…」

ピストンに合わせて、揺れる青木の腰。
フェラを練習する前の話って、恥ずかしそうに言う…。なんだそれ初耳だ…。むしろ、それは、なんというか…。

「すごく…きもちよくなっちゃうから…さわらないようにしてたのに…。
やっぱり…いだのきもちよくって…だから、んんッ♡したくなかったのにっ…あああんッ♡」

掴んでいた柔らかい尻、それを思いっきり引き寄せて、突いた。
反則なほどの青木の体。恋人同士のルールとか、駆け引きとか。そんなもんを全部、無しにするズルい体。

「頼むから…一人で始めるな。全部、考えてること、俺に言って…」

「うんっ…あっ♡ああんっ♡」

ぢゅぷぢゅぷっ♡と卑猥な音が響く。
真夜中、窓からは都会の街が宝石のように輝く。
ジャグジーの怪しい光に揺れる白い体。

青木が用意してくれた特別な日は、もう終わった。
それに気付かれたら、もう日付が変わったから…とそっぽを向かれるかもしれない…。

急にそんな事をする子じゃない…それは分かっているけど。まだ、この子の優しいところにつけこみたい。
甘やかしてくれる、同い年の彼に。もっと甘えていたい。

「想太…名前、呼んで。これからは、名前で呼び合いたい…」

キスをして、一度。甘い唇を塞ぐ。
分かったか?と、念を押すように。
唇を離して、ちゃんと分かっているか?と促す。


「こ…こうすけ…たんじょうび♡おめでとう…っ♡うまれてきてくれてありがとうっ♡♡」


…今日の事。一生忘れない。
多分、この世と別れる時、その時にも思い出すだろう。
この世と別れても、想太とだけは別れたくないなぁ…。そんなことを考えて、甘い唇を吸った。
たどたどしく、返してくれる赤い唇…。
これだけは離さない…絶対に…。


終




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