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もう少し、がんばりましょう




くだらない喧嘩をした。
本当にくだらない、喧嘩を…。


「いやだ!俺は寮に入る!大学生活を満喫するんだ!」

「絶対、駄目だ。百歩譲って同棲は今じゃないとしても、男ばかりの寮に入るのは駄目だ!」

志望大学、無事に俺も想太も受かった。
抱きしめあって喜んだ。これからも宜しくなんて、キスをした。
幸せだった。

その幸せをもっと濃密なものにするべく、これからのプランを提案した。
一緒に暮らさないか?そう、伝えた。

「あ、俺。寮に入りたいから」

語尾に音符がついているようだった。
受かるかどうか不安とか言いながら、想太もしっかり調べていたようだ。

「合格したから、本申し込みしなきゃなー♪俺、男兄弟いないから、楽しみなんだよ寮生活」

頭がくらくらした。
なんだ、それ。初耳だ。キスして濡れた唇で、何言ってんだ?
先週。俺の18の誕生日。初めてセックスをした。
かわいくて、エロくて。夢中でセックスをした。想太があんなに色っぽいなんて知らなかった。
寮なんて絶対に駄目だ。こんなエロいの、秒で輪姦されるに決まっている。

「お前、輪姦されたいの?こんな淫乱な体、すぐヤられるだろ!」

…違う、こんな事が言いたいわけじゃない。でも言葉が出てしまった。

「…おまえ。また、なりふり構わずにその辺の男にフェラチオしだすんじゃないだろうな」

そう言ったら、想太の顔が無表情になった。
俺の為にとはいえ、他の男のを咥えたことは絶対に許せない。
でも、言わないようにしてきた。だけど、寮暮らしなんて言われたら耐えられなかった。

「…井田、俺のこと馬鹿にしすぎ」

冷たい目。初めて見た。心臓が止まりそう。
名前で呼び合うようになったのに…逆戻りしている。
溜息を吐いて想太は立ち上がる。俺の部屋のベッドから。

「想太…」

呼んでも振り返ってくれない。上着を手に持って部屋から出ようとする。ダメだ。そう思い、腕を掴む。

「しばらく井田とは会いたくない」

そう言って、腕を振り払われた。以前、絶交された時よりも、ひどい空気。戸惑っていると、ドアが閉まった。
いや、ダメだ。ここで引き下がっては。
追いかける。階段を駆けるように降りて、あの体を抱きしめる。

「やめろ!」

強く抵抗されて、振り払われる。
怒っている。本気だ。どうしていいのかわからなくて、止まってしまう。

「帰る。もう追いかけてくるな!顔見たくない!」

そう言って、玄関から出て行ってしまった。
ピシャンと、引き戸の閉まる音。
…やってしまった。言ってはいけない言葉だった。上がり框でしゃがみこむ。

何でこんな事になった?
念願の合格。これからの2人のことを話し合う為に、うちに呼んだ。親が居ないから、うちにした。
もちろん、話をしたら抱くつもりだった。
なんなら、話をしながらのつもりだった。
ベッドの上でキスをして、これから一緒に暮らしてほしい。そう伝えたら、あれだ。
俺が悪いのか?恋人同士だろ。なら、一緒に住むだろう。
想太だって、ずっと俺と一緒にいたいって言った。
親に挨拶にもきた。これは家族になるってことだろう?なら、別に暮らす方が不自然だ。

あんなにエロい体。一人きりになんてさせられない。側にいて、集ってくる虫を駆除しなくてはいけない。
その為もあるのに、当の本人が全くわかっていない。

暖かくなってカーディガンも着なくなって、想太はシャツ一枚になることもある。
シャツになるのは仕方がない。でも、素肌に直接シャツを着るのはいただけない。
ピンク色の乳首が白いシャツから透ける。それを見て、両手じゃ足りない数の男達が想太を凝視する。
信じられない事に想太はその視線に全く気づかない。お前はどこに目をつけているんだ!と頭にくる。

シャツだけじゃダメだと、俺のセーターを無理やり着せた。
暑いよ…と恥ずかしがっていたけれど、セーターごと自身の体を抱きしめる姿を見て、愛しくてどうしようもなかった。
教室じゃなかったら押し倒していた。

想太は可愛い。でも、最近は可愛いだけじゃなくなった。
色っぽくなった。男を知って艶めかしくなった。
…想太が知った男とは俺。互いに初めてを捧げた。ああ。ここまで長かった…。
ようやく結ばれたんだ。ずっとくっついていたい。二人きりでいたい。想太の甘い体を毎日堪能したい…。
18歳、4月からは大人になる。大人の恋人同士。ならば、もうやる事は一つだろう…。

卒業式まであとわずか。進路が出揃った教室。朝のホームルーム前に想太と話がしたかった。
いつもは一緒に登校している。それなのに、昨日から連絡が取れない。朝も、待ち合わせ場所にこなかった…。

怒っている…それはそうだ…。あんな事言ってしまった。喧嘩…こんな卒業手前でするなんて…。
来週には一緒に京都に行く予定だった。新しく住む家の契約で。
確かに了承はまだとっていない。でも、嫌がられるなんて思わなかった。
だって、あんなに俺の事を好きだって、あんなに可愛く言っていたのに。

なんで…こんなことに…。無視される教室で、頭を抱えて始業のベルを聞いた。
昼休み、あからさまに避けられて、泣き出したい気分だった…。


◇


「ふーん。まぁ、でも大きく外れてはないんじゃねーの」

「大きく外れてる!俺、そんな淫乱野郎じゃない!」

放課後、あっくんと教室で座談会。
こんな日々もあと、僅か。
あっくんとこんな風に過ごすのも、あと僅か。そうか…あと、僅か。か。

「まー、乳首を他の男に弄られて、おまけにフェラまでしてるもんなぁ。井田の中ではお前は完全にビッチだろうよ」

「全部、相手あっくんじゃん!」

俺だけ勝手に悪者にして!と憤っていたけど。
フェラ騒動で両頬が真っ赤に膨れ上がっていたあっくんを思い出して、それ以上を言うのをやめた。
あっくん、橋下さんに往復ビンタされて、顔の形が変わっていた。
それを見て、井田が薄笑いを浮かべていた。井田と橋下さん…変な連絡ラインが築かれている。
あっくんの顔、今はどうにか見れる位には戻っている。…卒業式には完全体に戻したいね。

「とにかく…!俺は寮に入って下宿生活をするの!井田とは一緒に住みませーん!」

そう。そうなんだ。井田と一緒に住むなんてできない。
だって。一緒に住んだら…。きっと…。

「ふーん。まぁ、いいけど。フラれないようにな」

「え???」

あっくんの言葉に、背筋が凍る。
え??フラれる?なんで?なぜに?

「そりゃあそうだろ。恋人がいて、親元離れてやりたい放題できるはずなのに、お前は寮生活だろ?できないじゃん。セックス。やりたい盛りだぜ?お前も男だからわかるだろ?」

あっくんの筋の通った話に感嘆してしまった。確かに…。俺たちはやりたい盛り…。
性欲の散らし方。恋人がいるなら、確かにセックスだ。でも、でも…井田は俺の事、淫乱って言った。
淫乱って、淫乱って言った!!

「でも…でも…淫乱ってそんな風に言われたら…」

「…オレは淫乱な青木好きだよ」

優しい言葉をかけてくれる頭を撫でる。すると俺の腿に顔を擦り付けてくる猫みたいな男。

「あのよー。今更だけどさ。なんなの?その青木の膝にいる委員長は」

「相多、オレの事は気にしなくていいぞ!」

放課後の教室。あっくんとの座談会。でも、今日はゲストがいる。
ゲストの割には会話に全く参加せず、俺の膝の上でゴロゴロするだけだったが…。

「委員長、浪人決定で落ち込んでるんだって。膝枕してほしいって言われたから、実行してるところ」

「いや…まぁ、別にいいけどよ。青木のそういうところが井田の怒りを買うところだからな」

あっくんのお言葉にはいちいち含蓄がある。わかる。多分、コレ。井田に見られたら怒られる。
…でも、不合格って辛いだろうよ。クラスの為に一生懸命やってくれた委員長。
きっと勉強の時間を削ることもあったろう。今度はクラスメイトが委員長の為に頑張るべきだろう。

「…青木、井田とやっぱり付き合っていたんだな…そうか。とうとうセックスしたか…」

そう言って俺の腿にまた顔を埋める委員長。してほしいと言われたから、やっているけれど…。楽しいか?男の膝枕…。

「委員長…俺たちの事は内緒にしてな」

委員長の頭を撫でて、お願いする。豆太郎よりも懐いてくれている気がする。
人間のオスには結構懐かれるんだよなぁ…俺。

「青木…残念だが、お前らが付き合っているのはクラス全員知っている」

「ええっ!!」

なんですと!?めちゃくちゃ驚いていると、あっくんが呆れた顔で「あれだけいちゃついていて、バレてないと思ってる方が不思議だよ…」と言ってくる。ええ?なんでだろう?いちゃついてるか?ばれる理由がわからない…。

「青木…最近。エロいなと思っていたら…エッチしたんだな。人妻感出てきたよな…」

そう言って委員長が俺の腹の方に顔を向けた。腹…というか下腹部に顔を擦りつけてくる…。

「オレ、人妻もの大好きなんだよ…なんというか。ママ感があるの、大好物なんだよ…」

顔を擦りつけるだけじゃなく、なんだか匂いをかがれている…。

「青木…ママって呼んでもいいか?」

「いいわけないだろ」

拒否すると、残念そうな顔をする委員長。いや、ママって意味わかんないし。

「青木…じゃあ。おっぱい吸わせてくれないか」

「嫌に決まってんだろ」

拒否すると「絶望!」というような顔をする委員長。本当に意味わかんないな。

「青木のおっぱいを吸ったら、来年受かる気がする。オレ、すごくやる気出る!」

「ダメなもんはだめ。言うこと聞かない悪い子は、もう膝枕してあげません!」

設定にノッてやったら、委員長は調子にのって「ママー!」って呼んでくる。
膝枕程度ならいいけど、過度な要求は飲めない。だって俺、恋人いるし。井田の彼氏だし!

あれ?そういえば。一番こういうのにノリがいいあっくんの声がしない。
そう思って、あっくんの方に視線をやる。あれ?なんでスマホ向けてるの?また、ムービーか?

あっくんに話しかけようとしたら、廊下からけたたましい音が響いた。

「想太ッ!!」

ガラララッ!!と勢いよく教室の引き戸が開けられる。
登場した人物の顔を見ると、胸がトクンとする。
だって仕方ない。かっこいい。好き…。
喧嘩中なのに、彼氏にときめく。いや、だめだ。ニヤけたら負けだ。

「想太…」

俺の彼氏は、俺しか眼中にないらしく、俺目がけて抱き着いてくる。
抱え上げられるように、立たされる。だから、委員長が床に落ちる。
椅子を5つ並べて俺の膝を枕にしていたのに。バランスを崩して、べちゃって床に落ちた。

立たされて、ぎゅうっと抱きしめられる。ドキドキしてしまう…あ、ダメ。喧嘩中。
ダメだと思って、離れようとすると…ひょいと担がれた。
なんでこんなに簡単にお姫様抱っこができるんだ!なんなんだ俺の彼氏!

「相多、連絡ありがとう」

「いいってことよ。美緒ちゃんに、オレの活躍をちゃんと伝えてくれよな!」

「…わかった」

あっくん…井田に媚びるようになったか…。

「委員長…これ以上青木にちょっかいだしたら、来年も受からないぞ」

井田が委員長を脅す。
なんの根拠もない脅しなのに、傷心の委員長には効果がばっちりで「ヒイイイッ」って言って涙目。
とんでもない事を言うなぁ…って彼氏の顔にときめいていたら、目があった。
また、ぎゅうってされる。

「帰るよ、想太」

にこって。姫抱きされながら微笑まれちゃうと。もう、胸がきゅんきゅんする。
だめだ。喧嘩中だ!そう思って抵抗を試みる。それなのに、歩き出される。
いや、俺。背あるし。そんなに軽くないよ。なんでこんなに力あるの?すごい…かっこいい…。

「井田の顔見たくないって…言ってる!」

このままじゃあ負けてしまうと思い、次は口で抵抗した。
誰も居ないとはいえ、廊下を抱かれたまま移動するのは恥ずかしい…。
でも、嬉しい…。

「…俺が悪かった。許してほしい」

悲しそうな顔の彼氏。ダメだ。ここで許したらダメだ。ずるずると同棲までいってしまう。
それはダメだ。ダメなんだ。

「俺…誰彼かまわずフェラしないし!」

「…ごめん。わかってる。でも、絶対に俺以外にはしないでほしい」

「俺っ…イっ…淫乱じゃねーし!」

「ごめん…言い過ぎた。本当に…すまない」

しょげながらも、抱っこ移動をやめない俺の彼氏。
階段まで降りられると、流石に怖い…はずなのに。
安定した動きで、落ちてしまうという心配がない。
いや、流石に疲れるだろ…もう大丈夫。おろして…そう伝える。

「想太が許してくれるまで、やめない」

拗ねたように、そう言って聞かない浩介。ああ、もう。わかったよ。

「許すから!もうおろして」

このままだと下級生の教室を通る。三年がふざけてる…そう見られるだけならいいけれど。
どうやら俺たちはいちゃいちゃして、クラスの皆に関係がばれているらしい。
下級生にまでばれる必要はないだろう…。だからやめてほしい。

「想太が…あっちで一緒に住むって言うまでやめない」

要求がエスカレートしてる!こんなことでそんな大事なこと譲歩するわけないだろ!

「じゃあ、もう口きかない!」

睨んで、言ってみた。俺の顔を見て、溜息を吐く浩介。
ゆっくりとおろしてくれる。…でも、抱きしめられたままで…。

「このまま俺の家に帰ろう。部屋でゆっくり話そう」

「…うん」

浩介が可愛くって、近づいてくる顔を逸らすことができなかった。
キス…廊下でしてしまった。
唇を離してから、ようやく周りを見た。下級生は居なかった。でも…。

「お前らのそういうところだぞ。卒業間近だからって気を抜き過ぎ!」

あっくんがいた。

「ママぁ…卒業前におっぱい、ちゅぱちゅぱさせてー」

委員長…本当にそれじゃあ来年もダメだよ…。


◇


「ひゃあっ♡あっ♡ああ♡だめぇ♡♡こーすけ♡もう♡イっちゃう♡♡」

ああ。ダメだ。もう、我慢できない。俺も達きそう。
なんでこんなに気持ちいんだ。なんでこんなにエロいんだ。

じゅぽっ♡じゅぽじゅぽっ♡

想太の尻に腰を打ちつける。
昔、太ってたって言うのが嘘のように細い体。
ああ、でもこの尻の丸み…こういうところに当時の面影が残っているのだろう…。
ありがとう。幼い頃の想太。

快楽を噛み締めながら、愛しい人の体を眺める。
良かった…。また繋がることができた…。
…喧嘩。言葉にすると大したことが無いような気がする。
でも、もう。あんな思いはしたくない。
半日、口をきいてもらえなかっただけで、絶望がひどかった。

放課後の教室。俺を無視し続ける恋人はそこにいた。
恋人の友人が教えてくれた。ムービー付きで。
恋人は、俺の恋人は。俺の恋人なのに、他の男に膝枕をしていた。
頭に血が上る。脊髄反射のように走り出した。

教室の引き戸を開けて、恋人を抱きしめた。
このまま家に持ち帰ろう。そう思って抱えて運んだ。
そして、謝った。恋人に許してほしいと懇願した。
抱きしめた体から、甘い匂いが揺れる。本当はここで、このまま裸にしたい。
でも、そんな事をしたら、怒られるくらいでは済まない。
だから、性欲にちょっと待ってをして、歩き出した。

抱きしめた恋人の体。途中でおろす事になったけれど、キスができた。
かわいくて、かわいくて。本当に仕方がない。
この人と繋がったんだ。この人とセックスしたんだ…。
ずっとそんな事を思い出して舞い上がってる。
早く持ち帰りたい。早く、恋人に怒られない場所で、たくさん触りたい。
手を繋いだら、意外と嫌がられなくて…。帰りの電車の中でも、家路までも手を繋いでくれた。
ずっとにやけている俺を見ながら、想太もニコニコしてくれた。

大好きで、大好きで。どうしていいのかわからない。
わからないと思いながらも、この人の乱れる姿が見たいって。その要求だけはすごくて。
もう、回路が欲望に染まっている。
玄関で靴を脱いだ後、手を引っ張って、俺の部屋に連れ込んで。
扉を閉める前に、強く抱きしめて、甘い唇を吸った。
彼の体の全部。本当にすみずみまで、余すところなくキスをしたくて。
ゆっくりゆっくり、彼の纏う制服を脱がしていった。

服を脱がせて、脱いで。立ったままなのに、恋人に挿入した。
何度も何度も、彼の体内に腰を打ちつけて、快楽を追い続けた。
果てた時に崩れた想太の濡れた体。受け止めて、ベッドに寝せて。そしてまた挿入した。

「想太っ…キスしよう。キスしながら一緒にいこう…」

「うん♡浩介♡♡だいすき♡」

M字開脚。それをさせて、その足首を肩にかけた。
アナルが真上を向くほどに体を曲げさせて、柔らかい穴にピストンする。
卑猥な水音。それに重なる甘い嬌声。
赤い唇から濡れた舌が覗く。かわいい想太の舌を自分の舌と絡ませる。
舌を充分に絡ませると唇も重なり合う。リップ音が肉のぶつかり合う音と混ざる。

「んっ…ん…」

舌を絡ませて、唇を食べ合って。体まで繋いだら。
もうどこまでが想太で、どこからが俺か分からない。

自分の部屋。パイプベッドは、二人分の体重移動でギシギシと軋む。
もう、別に壊れてもいい。あっちではもっともっと丈夫な物を揃えよう。
二人でこれからも使うんだから。ベッドは良い物にしよう。
そう考えながら、想太の体で快楽を辿った。

ピチャピチャと、唇から濡れた音。
パンパンパンと、想太のアナルに、俺の陰茎が打ち込まれる音。

でも、内実は俺の方が想太に食べられている。
俺の陰茎を、亀頭を。想太が搾り取っている。
ぬるぬると。気持ち良すぎる想太のアナルのまんこが俺の全部を飲み込んでいく。

気持ちいい…。

キスをしながら、互いに吐精した。
びくびくっ…と跳ねる恋人の体。うっとりとしながらも、唇を離せない。
そして体も離せない。最後の一滴まで体内に流し込む。
大好きな恋人の、愛しい人の。想太の体内に。
俺の全部を受け止めてほしくて、受け入れてほしくて。
ちゃんと側にいてほしくて、離れないでほしくて。逃げないでほしくて。
…想太の体内から、出たくない。出れない。

「こうすけ…きもち、よかったね」

駄々をこねるように。未だに体内から出ない俺に、微笑む想太。
名前を呼んでくれている。優しく、頭を撫でてくれる。
泣きそうな気持ちになる。苦しくなる。胸が痛い。心拍数も上がる。脈拍もきっと早い。
これが、好きという感情なんだと。恋なんだというのを。ようやく知った。
こんな感情を教えてくれた目の前の人。大好きで大好きで。どうしようもない。

恋なんてものは知らなかった俺だが、経験上分かることもある。
想太へと溢れていく慕情。これが一生続いていくこと、途切れることが無い事。
それは簡単に予測できる。俺はそういう人間だ。想太以外、もう好きになれない。

だから、怖いんだ。恐ろしくて仕方がないんだ。
俺の気持ちは変わらない…いや、日々増していってしまう。
でも、想太の気持ちはどうなるんだろう。
俺のような蓄積していくタイプじゃない気がする。
閃きとかそういうタイプだと思う。

他の人に…閃かれたらどうしよう。
ふとした瞬間に、くらりと他の奴に恋したらどうしよう。
想太の好きが、他に向けられたら…どうする?俺は、どうなる?
追いかけたところで…振り払われたら、どうしたらいい?
そんな事起きたら…生きていけるのだろうか…。

多分、世の中のルール位は侵すだろう。罪を犯すだろう。
そんな事をしたら物理的に会えなくなるかもしれない…。いや、その時は狡猾にやろう。
ああ、違う。幸せに、毎日幸せに過ごしたいんだ。だから…駄目なんだ。
想太と離れるなんて、一緒にいられないなんて…絶対にだめなんだ。

「んっ…こーすけ…またおっきくなってる…あっ♡」

昏いところに墜ちてしまった。想太の甘い声で我に返る。
無意識のうちに、また想太の体内に打ち付けていた。ゆっくりとしたピストンで。

「想太…好きだ。好きだよ。大好きだ。大好きなんだ…」

髪を梳いて、頬を撫でて。願う。祈る。乞う。
お願い、俺から逃げないで。と。

「浩介…好きだよ…心配するなよ…俺の方が好きなんだから」

そう言って優しくキスをくれる。うれしい!と心が騒ぐ。
ああ、でも聞き捨てならない。

「想太より俺の好きの方が大きいし、多い」

そう言って、ピストンを深くする。

「ああっ♡あっ♡ああ♡ずるいっ♡おれのほうが…こうすけのこと好きなのにっ♡」

「俺の方が、想太のこと好きだ!!」

かわいい…。俺の事を好きだと言ってくれる恋人、俺の下で喘ぐ恋人。
なのに、幼い俺は恋人に好きで負けたくなくて、張り合う。

「こうすけっ♡ずるいっ♡♡ああっ♡おっきいのずるいっ♡おれのほうがっ、先にすきになったし♡ああっ♡」

負けず嫌いの恋人。愛しくてたまらない。気持ち良くて、たまらない。
じゅぽじゅぽっと恋人の体内で俺の陰茎が抽挿する音が響く。
とろとろの想太のまんこは、俺のまで溶かしていきそう。
何も考えられない…でも、負けたくない。

「俺の方が…先に好きになったっ…!」

「…うそ!おれのほうがぜったいさき!!んんっ♡ああっ♡もう、じゅぽじゅぽって、ああっ♡」

嘘。と恋人に責められる。そんな嘘つくはずがない。
俺の方が先に好きだった。この感情が好きって事を知らなかっただけで、俺は想太の事ばかり気になっていた。

「俺の方が先だ…感情の名前が分からなかっただけで、俺の方が先!」

「あああんっ♡おくっ♡きもちいいッ♡♡やぁッ♡ちくびだめっ♡」

一番深いところを目がけて、強く陰茎で穿る。
この言い合い。折れてほしくて、乳首を齧る。

飴玉のように、ピンクの乳首を舌で捏ねると、想太の体がびくびくっと跳ねる。
そして、連動するようにとろとろのまんこも俺を更に搾る。
もう我慢できない。早くなる抽挿。想太の甘い喘ぎ。
俺の下で、俺の全てを受け入れてくれる想太。
俺を甘やかしてくれる想太。
その想太のきれいな体に、かわいそうなほど中出しをした。
声にならない声。
想太の痴態にまた、頭がおかしくなる。
どんどん、深いところに墜ちていく。沈んでいく。

「こうすけ…だいすき」

汗で、濡れた顔で。キスで、溶けた唇で。そんなことを、綺麗な笑顔で言う。
胸がときめく。そして、苦しくなる。ぎゅうっと心臓を強く掴まれたよう。

「はぁ…♡ああっ♡こーすけの…でていっちゃう…やだ」

想太の中に溢れた大量の精液と共に、自分の陰茎を抜いた。
そうしたら、そんな事を言われた。
なので、また挿入した。
ああ…気が狂いそう…。

「んんっ♡こーすけのおちんちん、きもちいい♡すきっ♡」

何だこの子は。キスだけで恥ずかしいって逃げる時もあるのに。
濡れた唇から、赤い舌を出して、キスを強請ってくる。
いやらしい体で、艶めかしい脚を開いて、挿入してほしいと俺のチンコを強請る。
何で、こんなに極端なんだ。どうして、こんなに惚れさせるんだ。
こんなに、こんなにさせておいて…なんで、一緒を嫌がるんだ…。

「想太…俺のチンコ好き?俺のこと好き?」

「うん♡好き♡大好きっ♡ああっん♡またおっきくなった♡きもちいい♡」

大量の精液で、更に濡れた想太のまんこ。ゆっくりゆっくりピストンをする。
もう、何度射精しただろう…。それなのに、止まらない。もっともっとしたい。
もっと、ずっと。この体内に挿っていたい。セックスをし続けたい。

「じゃあ、一緒に暮らそう。同じところに住もう。二人でずっと一緒に…」

ぎゅうっと、愛しい体を抱きしめる。お願い…。そう呟きながら。
もう、離れられないだろ…俺たち。こんなに、こんなにも好きなんだから。
大好きで、ずっと一緒にいたくて…。こんなに、ずっと欲しいんだから。
お願いだから、二人で暮らそうよ。俺、なんでもするから。全部やるから…。

「あ、それはダメ。一緒に暮らすのはダメ」

脳内の血管がいくつか千切れた。
自然と口角が上がる。

「ひゃあ♡こーすけっ♡♡イヤぁ♡急に、ああっ♡んん♡やぁ♡♡あっ♡あっ♡ああ゛あッん♡」

壊れろ。そう思って穿った。
孕め。そう願って中に出した。

初めて、想太が女だったらいいのにって思った。
妊娠…学生結婚…。甘美な未来が過る。
妊娠での留年…想太は嫌がるかな?
でも、その間…ずっと独り占めできる…この人を…。ずっとずっと…。

ぷしゅうう。

と、想太のチンコから透明の液体が飛ぶ。
想太のピンクのチンコを扱きながら、妊娠する想太を想像した。
馬鹿だな…そう思うのに。でも同時にこんなにエロいんだから、わかんないよな。
…なんて更に馬鹿なことを思う。

潮吹きに戸惑う可愛い彼氏。
泣き喚く、愛しい、恋人。

俺の言うことを聞くまで…赦さない。
笑う俺を見て、想太が怯える。
そんな姿も愛らしくて…。深いキスをして、また、セックスを続けた。
大好きだよ。そう祈って、朝までセックスを続けた。


終




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